憩室炎で入院してたけど何か質問ある?

大腸憩室炎という病状で入院した39歳サラリーマンの備忘録的日記のようなもの。(現在進行形)

私が入院したときにあって良かったもの・必要なかったもの

 2016年10月に「大腸憩室炎」で入院しました。

仕事の合間に寄った病院で検査をしたら憩室炎が発覚。そのまま家に帰ることなく10日間を病院の中で過ごすことになりました。

一日二日の入院であれば、何も持たずにそのまま終えることができると思いますが、3日以上病院に滞在するとなるといろいろと必要なものが出てきます。

病院では入院の際に案内書のようなものを用意していて、その中に入院時に用意が必要なもののリストなどが記載されています。が、こちらに記載されているのはほぼ必需品。そのほかにもいろいろと入院時に役立つものがあります。

今回は、私が実際に入院してみて「これはあって良かった」、「これは別に必要なかった」というものをご紹介したいと思います。

これは必需品

 恐らく入院の案内書にも書かれているような必需品、最低限過ごすために必要なもの。

前開きのパジャマ

検査などがある場合はお腹がすぐに開けられる衣類が好ましいので、前開きのパジャマが大抵の病院では推奨されています。また、常時点滴を行っていると袖口あたりに点滴のチューブが引っ掛かってしまい気になることがあるので、できるだけ袖口の空いた、7分袖くらいのパジャマが良いと思いました。

私は初日はスーツだったため、病院のレンタルパジャマを借りましたが、2日目以降は市販の上下に分かれたボタン付きのパジャマで過ごしました。

下着

パンツなど。2~3枚は必須になると思います。大きい病院では院内の売店などでも購入可能だと思います。

私はカミさんに洗いモノを持ち帰ってもらって洗濯してもらえたので非常に助かりましたが、長期入院であれば病院で洗濯機を借りて選択するような形になっていたのではないかと思います。

定期的に洗濯が難しい状況であれば多少多めに持っておいてもよいかもしれないです。

ティッシュペーパー

ボックスティッシュを置いておきましょう。テーブルの汚れを拭いたり、ハンドタオルの代わりにもなります。必需品です。

歯ブラシ、歯磨き粉

旅行用のコンパクトなものがあれば十分かと思います。必需品です。

コップ

主に薬を飲む際や歯磨き時に使用することになります。

家にあるもので十分ですが、落として割れてしまうことが無いように、プラスチック樹脂や金属製のものを選んでください。

私は薬を飲むときには購入したペットボトルの水を使っていたのですが、1度だけ直前に水を飲み切ってしまい、その場では水も買いに行けないという状況になり、ナースセンターからコップを借りて薬を飲みました。結局それ以降では使用しませんでしたがどういう状況になるかわからないため、コップはあったほうが良いです。

ハンドタオル

手や顔を拭くためのタオル、手ぬぐい。

バスタオル

シャワーが使えるようになったら必須ですね。

入れ歯容器など

と、病院の案内には書いてありましたが私は入れ歯では無いので不要でした。以外に忘れがちな必需品なんでしょうね。

室内履き

スリッパやサンダルなど、脱ぎ履きがしやすいものが良いと思います。私はホームセンターで買ったクロックス風のサンダルが家にあったので、それを持ってきてもらい履いてました。

普段飲んでいる薬とお薬手帳

普段から飲んでいる薬があれば持っていきましょう。どうしても持ってこれない場合は別途処方してもらえることが多いですが、特殊なものは難しいのかもしれません。

お薬手帳を持っている方はお薬手帳も用意しておきましょう。話がスムーズに進みます。

入院したときにあって良かったもの

ここまでは病院の入院案内にも書かれているもの。以下は今回私が実際に入院してみて、あって良かったと思うものです。

病院に持ち込むものを改めて整理すると、以下の3つに大きく分類できました。

  1. 病室での時間を過ごすためのもの
  2. 身だしなみを整えるためのもの
  3. 何かあったときに役立つもの

それぞれについて解説していきます。

1. 病室での時間を過ごすためのもの

入院中はとにかく時間の使い方に悩みます。多くの病室ではテレビがついていると思いますが、一日中テレビだけを見て過ごすのも大変です。

私は以下を用意しました。

ノート、ペン

普段紙に文字を書くことがほとんどない私ですが、こういう場面で素早く状況を記録することができるのはやっぱり紙とペンでした。

スマートフォンでもメモは可能ですが、いろいろな状況によりスマホを取り出せないこともあるため、紙とペンはベッドサイドに置いておくのがおすすめです。

私は担当医の話や日々の状況を記録するためにキャンパスノートを買いました。自分のための控えだけでなくこのブログを作るのにも役立っています。 

タブレット

パソコンがない間はずっとこれでマンガを読んでました。Kindle 専用機です。スマホの容量がなく、画面サイズも小さかったのでしばらくはこれを使っていました。

後日、パソコンを届けてもらってからはほぼ使用しなくなりましたが。時間つぶしには最適でした。

スマホタブレット、パソコンは病室内での利用が禁止されているケースもあると思いますので、事前に必ず確認しましょう。

充電器

スマホタブレットの充電器。必要分を用意しておきましょう。病室にはほぼ必ずコンセントがあります。その他の電子機器もそうですが、少なからず電気代が病院側にかかるものですので、事前に断ったうえで利用するようにしましょう。

Bluetoothイヤホン

音楽を聴く際に利用しました。テレビの音声はピンジャックのモノラルイヤホンが必要になると思いますが、こちらはスマホ用です。普段通勤通学で音楽を聴いている方はその時に使うイヤホンなどでよいのではないかと思います。

パソコン

このパソコンを持ち込むことができたのが幸いでした。ネット環境さえあればほぼ自宅と変わらず色々なことができます。ネット接続はスマホテザリングで行いました。

2. 身だしなみを整えるためのもの

普段生活していると、家にはいろいろな道具がそろっているものですが、他の場所に数日間滞在していると、色々と身だしなみのために必要になってくるものがあります。

ヘアーブラシ

寝癖などの髪のケアに。使い慣れたものが良いですが、大きいとかさばるので小型のものが良いと思います。

髭剃り(電気シェーバー)

カミソリは持ち込みに制限がある場合があるかもしれません。安全性などを踏まえると、電気シェーバーなどであれば問題ないと思いますが、カミソリは使う際に細心の注意が必要です。点滴などで利き手が使えなかったりすると、思いもよらぬところでキケンになることもあります。

つまようじ&糸ようじ

コンビニの割りばしのように爪楊枝が手に入ることはありませんので、持ち込んでおきましょう。私は歯の間にモノが詰まりやすいので爪楊枝の持ち込みは必須でした。食事ができるようになったのは入院から4日目くらいからですが。。。

シャンプー(使い慣れてるもの)

病院内に置かれているものもあるかもしれませんが、私は肌に合わずかぶれてしまいました。入院の時に旅行用のコンパクトなものを持ち込むケースもあるかと思いますが、同様に使い慣れていないものは肌荒れの原因になったりもするので、やはりできるだけ普段から使っているものを用意するのが良いと思います。

2. 何かあったときに役立つもの

そのほかに滞在中に急に必要になったもの、あって良かったものです。

毛抜き

私は髭をそるときにカミソリ負けをしてしまうところがあるため、髭抜き用に使用しました。1~2泊の出張や旅行では必要ないのですが、数日間滞在するときは用意するようにしています。

綿棒

耳かきの代わりやらなにやら、持っておくと何かあったときに使えます。

ユニクロのフリース

病気で入院しているので、空調の変化で寒くなってしまったり不意の体調の悪化で寒気を感じることも少なくありません。

パジャマとは別に保温性の高い薄手の上着があると、重ね着して寝れるので便利です。

 私も入院2日目の夜に急に体調を崩してしまい、ナースコールで掛け布団を1枚追加してもらってさらにこのフリースを着て震えながら一晩を過ごしました。

洗濯用洗剤

数日間衣類を着まわすために選択をしなければいけないケースも出てくると思います。これも肌荒れなど、影響ある方もいるかと思いますので、普段使っているものがあればそれを選んで持ち込むようにしましょう。

マウスウォッシュ

リステリンとか、そういうやつです。もちろんブラッシングできるのが良いですが、両手が自由に使えない場合やちゃんと歯磨きできない状況などもあるかもしれないので念のために。

リップクリーム&ワセリン

建物の空調にもよりますが、湿度が低めにコントロールされていると肌が乾燥しがちです。

おまけ

私は持ち込みませんでしたが、病院食は塩分が超控えめなので、食卓塩やマヨネーズなどを持ち込むようなケースもあるみたいです。

この辺りは病状にもよりますが、食事に関してはあまり手を入れないほうが良いとは思います。。。塩分もちゃんとバランスを考えた上のものだと思うので。

すみません、こぼしちゃいました♥

「入院が必要なんですか?」

――そう。

 

「期間はどれくらい?」

――早くて一週間。

 

「通院では治せないの?」

――治せなくはない。食事を控えて薬で治る人もいる。

ただ食事をすると大抵炎症は広がるので、そのまま悪化することもある。

消化に悪いものは食べちゃだめ。お酒は確実に悪化させるので絶対ダメ。

長引く可能性があるので入院を勧める。

 

「入院ってどんな感じ?」

――ご飯が食べれないので、点滴をつないで抗生剤を投与する。

炎症が引けば普通に行動できるようになるので、入院中に回復の経過を見ていく。

退院できるのは完全に炎症が引いてから。

 

「つ、通院では治せないの?」

――そういう人もいる。入院よりは長引くかもしれない。

 

「にゅ、入院って……どんな……」

 

どうしよう、お昼休みに仕事を抜け出し、診察が終わったら会社に戻ろうと思っていたが、逆にこのまま戻るのも不安すぎる。

かといってこの場での判断も難しい。

「今日は薬を出してもらって、後日また状況を見てもらうこともできますか?」

「まあ、できなくはないですが……そうしますか?」

じゃあ抗生剤を処方する準備するので、と柴咲コウ似の女医さんがカチャカチャと書類を作り始める。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。家族に電話してきていいですか。」

決まったら受付に声をかけてください、と女史。私は診察室を出て、廊下を抜けて病院の外へと出た。

 

スマホを取り出してカミさんに電話をかける。

急な話だけど入院することになった。

憩室炎というらしい。

入院期間は一週間くらい。

今日から帰れない。

今から入院の手続をする。

「わかった。着替えとか準備できたらそっちに行くね。」

 

会社にも電話をかけた。

すみません。突然ですが入院になりました。

退院。よくわからないけど一週間くらいかかるみたいです。

すみません。

「わかった。ゆっくり休んで。」

 

家で治療をする、という選択肢ももちろんあったのだが、食事を抑えた状態で生活バランスを崩さずにいることにちょっと自信がなかったのと、どんどん強くなっていくお腹の痛みを感じながら、このまま中途半端な対処をして病状が長引いてしまうことが心配だった。

できるなら短期間に集中して治療したいと思い、結局、相談というより入院が決まった前提で話を進めてしまった。

この時は家族も会社も理解があったことが非常にありがたい。

 

それぞれの電話を終えて病院の中に戻る。ちなみにこのとき、病院の建物に戻ったこの瞬間から10日間、私はこの病院の中から出られなくなる。よーいスタート。

 

診察科の受付に戻ると入院に必要な書類を渡された。

書類に記入。

入院受付の窓口へ行き、書類を渡して手続き。

またレントゲン撮影。

 

しばらくして病室へと案内される。

病室は4階にあった。「4」は好きじゃない。

エレベータを降りて廊下を右に進むとすぐにナースステーションがあった。

廊下の左右に病室、手前のほうは2人部屋になっているようだ。

奥へ進んでトイレを過ぎたあたりは4人部屋。私が入った6人部屋はさらに先、病棟の一番奥の左手の部屋だった。

6人部屋の中は左右に3つずつ、ベッドが配置されるスペースが区切られていた。配置されたベッドは全部で5つ。入って左手の真ん中のスペースにはベッドが置かれておらず、代わりに車いすと点滴のスタンドが置かれていた。

左手奥にある窓際のベッドに案内され、しばらくここで待つように言われる。

スーツを着たままベッドの上で待つ。

場違いな感じ。

 

しばらくして担当の看護師さんがきた。よろしくおねがいします、と笑顔。

優香に似てる。と思ったけどマスクしてるからよくわかんない。

マスクの下は優香と勝手に妄想。

スーツ姿の私。突然の入院などで当然着替えは持ち合わせていない。レンタルのパジャマを貸してくれた。

まずは着替てください、と看護師さん。

カーテンを引いていそいそとパジャマに着替える私。

準備完了。

じゃあ、施設のご案内をしますのでついてきてください、と看護師さん。

はい、と立ち上がろうとするが、靴は仕事で履いてきた革靴しかない。

「あの、これ、靴。」

「あ、大丈夫です!」

白衣の天使、満面の笑顔。

いやいやいや、大丈夫じゃない。パジャマに裸足で革靴ですよ。

白衣の天使、満面の笑顔。

……しかたない、革靴をガポガポいわせながらついていく。

ぐるっとフロアを見て回る。テキパキ説明する看護師さん。ここがシャワー、あれが洗面台、ここはトイレ、あそこが面会室、これは冷蔵庫。

絶食なので冷蔵庫は使わないんじゃないかな。

 

病室に戻りしばらくすると、看護師さんがトレイを持ってやってきた。点滴の準備をするらしい。

看護師さんがいそいそと道具をセットしていく。そして針を取り出し、

「ちょっとチクっとしますねっ。」

 

ぶすり。 

 

憩室炎の治療は基本的に痛みが引くまで絶食となる。その間、栄養がなければ当然よけいに体調を悪くするので、食事をしない代わりに必要なエネルギーを点滴で補うそうだ。

そのため、点滴の針を刺しっぱなしにして24時間点滴を受け続ける状態が数日間続く。

この刺しっぱなしになる針は留置針(りゅうちしん)と呼ばれるもので、金属ではなく樹脂でできていてやわらかい。ちなみに刺すときには金属の針と一緒に差し込まれて、金属の針だけが抜き取られるような作りになっている。

この留置針を左腕の手首付近に刺し、留置針と15センチメートルくらいの短いチューブをつないでテープで腕に固定しておく。このチューブの先端はコネクタになっており、点滴側のチューブと接続ができるようになっている。

その後、点滴をスタンドにぶら下げ、伸びたチューブを左手のチューブと繋ぎ、点滴を滴下していく。

ぽたぽたと落ちる点滴。

うん、手際が良い。

と思ったら看護師さんがなぜかベッドの上をタオルでごしごし擦っている。

「ん、どうしました?」

「すみません、こぼしちゃいました♥」

 

え、何を……ってうわぁぁぁ!

起き上がってみるとベッドの上にでっかい血のシミ。なんじゃこりゃぁあ!

白衣の天使、無邪気な笑顔。

 

つづく

いこいのへや、って書いて『憩室』だよ♥

病院ではとにかく多くの時間を待ちながら過ごす。

病院で働いている側からすれば時間の隙間なく慌ただしく動いているのだろう。

だがひとりの患者からすれば接点はほんの数分だ。

 

柴咲コウ似の女医さんの触診は流れるように終わり、CT検査を行うことになった。

診察室から離れ、今はCT室の前で時が来るのを待っている。 

しばらくして名前を呼ばれてCT室に入る。部屋に入ると若い男性技師から名前を聞かれた。患者を取り違えないためのルール。私が私であることを証明することは、自ら名乗ることだけである。

名前を名乗ると据え置きのパジャマを渡され、機械の上に横になるように案内された。

部屋の陰でいそいそとスーツを脱ぎ、パジャマに着替える。会社から持って出てきたビジネスバックも近くのカゴに入れておく。

タイムトラベルでもさせてくれそうな仰々しいCTスキャンの機材。中央に置かれたベッド的なものの上に横になると、男性技師が撮影の準備をはじめる。下腹部のあたりに重たいシートを掛けられる。鉛版だろうか。ちゃんと守ってね。

 

準備を終えると技師は奥の部屋に入り、撮影開始の案内をする。

 

見知らぬ、天井。

 

部屋全体が唸りをあげて響く。

 

何かの映画で見たワンシーン。

病院内での銃撃戦。こんな感じの機械が作動してみんなの銃を強力な磁力で吸い寄せる。

あの映画って何だったかな。ジョン・トラボルタがいたような。フェイス・オフ?

てかあれはCTスキャンじゃなくてMRIってやつだったっけ。

フェイス・オフ……ジョン・ウー……2丁拳銃……鳩……白いハトがバサバサー。

 

そんなことを思っていたらあっという間に撮影は終了。

元のスーツに着替えたら書類を渡されて元の診療科の窓口へ。ピタゴラスイッチ

 

診療科の窓口に戻り、再度柴咲コウ似の女医さんがいる診察室へ。

 

開口一番、柴咲コウ様が強めの口調で。

「健康診断してません?!」

ちょっと表情が険しい。何か怒られた気分。

「あ、はぁ、1ヶ月くらい前ですけど。え?」

バリウムが写ってますね」

え?一か月前の?

ていうか、うんこって一か月も腸にいるの?バリウムだから?

確かにバリウムって白いし。

健康診断のこと言ってなかったけどまずかった?

いやでもその時はちゃんと下剤を飲んで、バリウムは排泄されたはず。

ほら、本当に1ヶ月も前のことですので、すっかり忘れておりましたし。

胆嚢とか、関係ないの?肝臓も?

えーと、もしかして、怒ってる?

「……憩室炎ですね。」

女医は別に怒ってない。淡々と続ける。

 

憩室とは、粘膜の一部が臓器の圧力の上昇などによって袋のように突出したもの。

大腸にある憩室は「大腸憩室」と呼ばれる。

要は、大腸の中にモノが溜まりやすい「スキマ」ができているような状態らしい。

この憩室は決まった部位をさしているわけではなく、腸内のあらゆる所にできるようで、人によって発生する数や大きさが異なる。若いころに憩室を持つ人は少ないが、高齢になると憩室が増えていく。

そして憩室炎とは、この憩室の中に便がつまったりして炎症を引き起こした状態。この憩室炎の症状になると、発熱、腹痛、下血などをきたすことになる。

ちなみに、憩室は大腸のいろいろな箇所に発生する可能性があるが、もともと日本人は大腸の右側に憩室が発生しやすく、欧米人は大腸の左側に憩室が発生しやすい傾向があるそうだ。それはもともと食生活の違いが大きな理由だったようだが、最近は食生活が欧米化しているため、日本人でも大腸左側の憩室の発生が増えているらしい。

 

憩室が起こる理由は様々だが、腸内の圧力によるものが理由の一つと言われている。

腸内の圧力が上がることで、腸の壁の弱い部分が外側に向けて徐々に膨らんで行き、憩室を作り上げる。食生活や日常生活のストレス、うんこするときに力む時だって腸内の圧力は上がる。

 

私は腹部の左側、大腸の中の下行結腸と呼ばれる場所にこの憩室炎が発生している。

 

柴咲コウ女史は「いこいのへや、って書いて『憩室』だよ♥」と教えてくれた。

(だよ♥、は私の妄想だったかもしれない)

憩室。字面は良いが、ここで憩いの時間を過ごしているのは細菌どもである。

ゆるせん。

 

ビジネスバッグから普段仕事に使っているメモ帳を取り出す。

「えーとすみません、病名なんでしたっけ?もう一度。」

「憩室炎です。いこいのへや。いこいって漢字ちょっと難しいけど、舌って書いて――」

「あ、大丈夫っす。」

適当に空白のあるページを開き、ひらがなで大きく『けいしつえん』と殴り書きした。これでオーケー。

 

診察室の机の上に置かれた縦長のモニターには、先ほど撮影したCTスキャンの映像が表示されている。素人の目にも確かに、左わき腹側の腸が大きく腫れているように見えた。

そして、その腸の壁際に、白い影が大きく2つ。

そうか、バリウムってこうやってレントゲンに写るのか。そりゃあ女史もすぐ気づくわ。

ていうかこんな時間にこんなとこにいちゃ駄目だろキミ。マジで1ヶ月も腹の中に残ったままだったのか。

そして、朝に出た白い奴はこいつの仲間だったのか。

 

女史が説明を続ける。

治療について。

 

憩室炎は主に細菌が原因で起こるため、治療は抗生剤の投与で行う。

――抗生剤、風邪の時とかにも飲んだりするあれだよね。菌を殺すやつ。はいはい。

 

また、食事は炎症を悪化させるため原則控える。

――まあ、腸がやられてるなら仕方ないか。晩御飯は消化にいいやつ食べないとね。

 

順調に炎症が引けば、一週間くらいで回復する。

――一週間は暴飲暴食できないってことかな。残念だな。

 

「というのを、入院して経過を見ていくかたちになります。」

 

え、入院!?今から?

 

つづく 

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そのうんこ、どんな白さ?

その病院は、少し坂を上ったところにあった。

会社は都内でも有数のターミナル駅の外れにあったが、この駅の周辺は商業施設ばかりで総合病院のようなものは見当たらない。

小さな診療所やクリニックは点在しており、過去に体調が悪くなった時に診察をしてもらったことはあるものの、今回はちょっとした不安もあって大きめの病院に出向きたいと思った。

何せ、うんこが白かったからだ。

午前中に会社で腹痛を訴えてトイレに行った。そしてでてきたうんこが白かった。

ちょっと慌てて午前中の仕事を切り上げ、メンバーに伝えて会社を出てきた。

白いうんこのことじゃない。病院に行くとだけメンバーに伝えた。

 

スマホの地図を見ながら会社からバスで10分。バス停から少し登り坂を行くと、病院の案内看板が見えた。

うまくいけば昼休み中に診察を終えて、午後には会社に戻れればありがたいなぁ。なんてことをこの時はまだ考えていた。

しかしその思いはあっさりと打ち砕かれることになる。

 

そもそも、病院も昼休みだった。

 

午後の診察は13時半から。とりあえず昼休み明けに会社に戻ることはあきらめ、診察をしっかりしてもらおうと思った。

この病院に来るのは初めてではない。数年前に片頭痛で一度診察をしてもらったことがあり、その時は特に大きな問題は見つからなかったのだが、院内の案内や担当医師の対応の印象が良かったので、しっかり診察してもらうならこの病院かなとなんとなく思っていた。

 

診察券は持ち歩いていなかったので、入り口をはいってすぐの受付のお姉さんに手続きの方法を聞いてみた。

 

――お腹が痛いので診察に来ました。でも診察券を忘れました。

 

「以前の診察から期間が空いているので初診料がかかりますがよろしいですか。」

 

――はい。わかりました。

 

「診療科は消化器内科でいいですか。」

 

――(なぜこちらに聞くのか。白いうんこを出した管は消化器であるからして。)はい、そうだと思います。

 

「こちらの紙に記入して」

 

――わかりました。

 

渡された用紙に必要事項を記入して手続きを行った。

この時間、病院に来ている人たちの多くは老人。私と同じようにスーツ姿のサラリーマンは少ない。というかいない。

病院に来るといつも

「ここはおぬしが来るところではない」

と言われている気がしてばつが悪い。

 

総合受付が終わると、診療科の窓口を案内された。例の消化器内科である。

消化器内科の窓口のお姉さんに総合受付で預かった書類を渡す。

お姉さんから質問票と体温計が渡され、体温と血圧の測定を指示される。

渡された体温計で体温を測り、待合室に置かれた血圧計で血圧を測る。

血圧計の仕組みがよくわからない。風船みたいなのを膨らまして何を測っているのか。そもそも血圧ってなんだ。

体温と血圧を紙に書いて渡す。

今度は採血室で採血をして来いと書類を渡される。

採血室の窓口のお兄さんに消化器内科で預かった書類を渡す。

自分が転がっていくといろいろ手続きが進みだす。ピタゴラスイッチのビー玉の気分。

 

質問票には腹痛があることと、白い便が出たことについて書いた。

熱は少し高めの37.2℃だった。

血圧は、忘れた。いつも通り低かった。

採血は苦手だ。いつも血管が見えないといわれる。きつく縛られ、バシバシとたたかれた挙句、ぐりぐりと刺しなおされることも何度かあった。

でも今回の採血はそんなことはなく、強い痛みもなくスムーズに終わった。ありがたい。

 

採血から診療科の窓口に戻り、しばらく順番待ちの時間になった。

その間、今回の白い便が一体何だったのか、スマホでいろいろ調べてみた。

 

検索『白いうんこ』

 

代表的な結果は胆嚢や肝臓の問題。

胆嚢に何らかの問題が発生して胆汁の分泌が少なくなると、便が白くなるらしい。

そもそも胆汁は肝臓で作られて、胆嚢にため込まれるとのことなので、肝臓そのものの働きがおかしい場合も同じような症状になるようだ。

その他に代表的なものはロタウィルスの感染。

ロタウィルスとは急性胃腸炎を引き起こす感染症で、主に子供に多く起こる。潜伏期間は1~3日ほどで、39℃を超える高熱、腹痛、激しい下痢、嘔吐に襲われる。そして、その時に便の色が白色になることがある。とある。

そのほかには消化不良や栄養不足、健康診断の時に飲んだバリウムが排泄されるときなどに便が白くなるらしい。

 

今朝見た白いうんこは固形。

ロタウィルスは激しい下痢、とあるのでこれは違いそうだ。

そういえば、毎年の健康診断では肝臓の値が悪く、最近は『脂肪肝』の診断もでていた。やっぱり肝機能が落ちてなにか問題が発生しているのかも。

 

待っている間、カミさんとLINEでやり取りもしていた。

 

 

「横っ腹が痛い。胆石とかかな」

 

「胆石って(うんこの絵文字)白くなるの?」

 

「わからんけど胆汁が不足すると白くなるっぽい。胆嚢に何かあるかも」

 

「胆石か、肝炎とか」

 

「昨日のご飯のあとからちょっとお腹張ってたから食べ物のせいかも」

 

「そうやね」

 

「夜ごはん何しよかな」

 

「内臓にやさしいやつ笑」

 

「魚かな」

 

「煮物とか」

「肉じゃが?」

「簡単なやつで」

 

 

この時はまだ、晩御飯が食べれると思っていた。

この間、時間を追うごとに少しずつ腹痛が強くなっていた。

 

しばらくして、名前が呼ばれて診察開始。

担当医は若い女性。少し鋭い眼光で柴咲コウ似。

 

――今日はどうされました?

 

「今朝から腹痛で」

 

――どこのあたりが?

 

「全体的にだけど、左側が特に痛いです」

 

――昨日食べたものは?

 

「鍋」

正確には豚しゃぶ鍋だが鍋とだけ言った。何となく『ぶたしゃぶ』って言いづらかった。

 

――最近海外に行った?

 

「行ってないですね」

  

――吐き気は?

 

「特にありません」

 

あ、さっきの海外の話、半年前くらい前にアジアに出張していたことがあったな。そもそも最近っていつ頃だろう。いまさら言うのもなぁ。

 

――ほかに気になることは?質問票に書いた白い便というのは?

 

「今日の昼に会社で出たんです」

 

――どんな白さ?

 

「どんな白さ?」

 

――どんな白さ?

 

「どんな、えーと、割と普通の白?あーでも紙みたいな白さじゃなくって、普通の。壁紙みたいな。で、ちょっと緑っぽかったかも。」

普通の白と言っておきながら緑っぽいとか、自分で言っていてよくわからない。

あと壁紙って全部白じゃないだろ。

 

――これまでにアレルギーとかは?

 

「特にないですが、小さいころ小児ぜんそくにかかってました」

 

――今朝からトイレには何回行った?

 

「2回ですね」

 

――1回目から白かったの?

 

「1回目は見てなくて。2回目の時に見て気づいて慌てたんです」

 

――ベッドに横になって

 

 

診察室に備え付けられたベッドに行き横になりながら、うんこの白さを例える正解は何だろう。そんなことを考えていた。 

 

つづく

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すべての始まりはうんこだった

その日もいつかと同じ、ありきたりな朝。

築40年。2LDKの賃貸マンション。

6時にスマホのアラームの音で目覚め、リビングへと向かう。

ガラストップのローテーブルに置かれたスマホのアラームを止める。

リビングの窓を少し開け、テレビをつけたらうとうとして、ソファーの上で二度寝

そろそろクーラーをつけなくても寝苦しくなくなってきた季節。

カーテンがなびいて、涼しげな青空がのぞいている。

今年の夏は雨続きで昨日も雨だったけど、今日はちょっといい天気みたいだ。

 

ニュース番組は時間通りに進行するから意味がある。内容を知りたいわけじゃあない。

テレビからいつもどおりに流れる6時半のジングルを聴き、起き上がり、髪をセットし始める。

6時半にアラームをセットして起きるとあまり調子が出ない。結局こんな二度寝が日課になってしまった。

近隣の家賃相場よりも安めで、老朽化が著しいこの建物。

入居率も高くないのだろう。ほかの階ではデイケアサービスの事務所が入っていたり、近隣のマンション建築の時には建築関係の人の休憩所としても使われているようだ。

このあたりの住宅地は一戸建てや2階建てのアパートが多く、マンションはまばら。

この昭和の団地のような建物と駅前の分譲マンションのいくつかがぽつんと頭を出している。

外の廊下にはきっと昨晩の雨が吹き込んで水たまりができているだろう。

オートロックもない、スキマ風も多いマンション。

 だけどこの4階の東向きの窓から見える広々とした住宅地の景色が気に入って、引っ越しの決断もできず、結婚してからもう8年ここで夫婦生活を送っている。

 

カミさんが起きてきた。

冷蔵庫から出した朝食は昨日の残りモノ。

豚しゃぶの具を丼にのっけて、小皿に残しておいたゴマダレをかけて一気にかき込む。うまい。

歯を磨き、スーツに着替える。ネクタイをするのは客先に訪問するときだけ。

7時ゼロ分。

テレビがいつも通り律儀に番組を切り替える。ちょうどよい合図。

カミさんと玄関で、忘れ物がないか確認。

ハンカチがない。いつも忘れてしまう。

ハンカチを受け取って、カミさんに見送られ外に出る。

部屋のすぐ隣にある錆びついた外階段から下へと降りていく。そう、角部屋なのもお気に入りのポイントだった。

駐輪場に置かれた10年物のママチャリ。

カギの動きが硬くて、鍵穴にもスムーズに入らない。最近のちょっとしたストレス。

油をさせばいいだけなのに、1年くらい放っておいてる気がする。

しばらくガチャガチャやってやっとカギが開いた。

大きめの肩がけビジネスバッグをカゴに放り込み、自転車にまたがって駅に向かう。

駅までは平坦な道。隣駅から出る始発電車に乗れば座って40分。乗り換えなしでひと眠りしながら会社に行ける。

これも引っ越しできないもう一つのお気に入り。

 

会社は都内。10年務めている。

転職を考えていないわけではないけど、これまでも重要なプロジェクトを預けてもらい、それなりのポジションで働かせてもらっているので、ここでできる限りのことを試していきたいと思っている。

特に東京で消耗もしていない。

今は中間管理職。

最近ちょっとした組織変更があり、朝から今後の方針などの話をメンバーとしていた。

 

お腹に違和感を覚えたのは10時ごろ。会社の自席で毎週提出する報告書をパワーポイントで作成している時だった。

ちなみにこのパワーポイント、作るのに2時間くらいかかることもあるが、報告は10分で終わる。サラリーマンとはこんなもの。一方で、1時間で作った提案書が10億円の受注になることだってある。

かけた労力と生み出せる結果のギャップを嘆いているわけではなく、皮肉っているわけでもない。必要なのは労力のバランス。

キャリアとは分散投資みたいなもので、いち分野に長けることも重要だけど、トータルで勝つのはそれぞれのタスクを全部「やりすぎることなくきちんとやってきた人」そして「いいタイミングでそのどれかにレバレッジを利かせられた人」だと思う。

そこにはそれなりの器用さも必要だけど、どこかにこだわりすぎて一人の力から抜け出せない人は大抵消耗していく。

 

話がそれたけど腹痛の話。

今回の腹痛、もともと私はお腹は弱いが、いつもとはちょっと違った妙な腹痛だな、とは思った。

下痢の時のような腸の動きは感じるんだけど、便意がそれほどない。

 

うんこでそうなのに、うんこ出ない。

 

お腹ぐるぐる言ってるのに、うんこ出ない。

 

ふしぎ!

そんな感じ。

 

結局うんこが出る感じではないので、しばらく資料作りを継続していた。

妙な腹痛がはっきり「痛み」になったのはその30分後くらい。

下痢の時の「ぐるぐる」「出そう」な痛みではなく、明確にズキンとした痛みがあった。

これはちょっとまずいなと思い、トイレへ。

会社のトイレは特に個室が少なく、全室使用されていることが多い。

案の定、フロアのトイレの個室は全部埋まっていた。

 

まいったな。

最近、男性トイレの個室がやたら埋まっているのはスマホのせいだろうか、この中でまじめにうんこしている奴はどれだけいるんだろう。

個室でゲームしている奴は呪われろ、まじめにうんこしろ。

いや、人のことは言えない。自分もついつい個室に入るとスマホを取り出してしまうことがある。たぶんその時は同じように呪われてるなぁ。

 

などと思いながら、とはいえ待っているのもつらいのでフロアを移動して空いてる個室を探しに行く。

やっと見つけた個室で用を足す。

 

でた。

うんこでた。

何となく見てみた。

 

下痢じゃなかった、固形。

まあ、それは普通。

 

昨日の豚しゃぶのニラが入ってた。

まあ、それも普通。

 

でも、そのうんこは、やっぱり普通じゃなかった。

 

そのうんこは、白かった。  

 

つづく

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はじめに:憩室炎で入院してるけど何か質問ある?

「憩室炎」という病気をご存知でしょうか。

私は、この憩室炎を患って初めてこの病気の存在を知りました。

そしていま私は、この憩室炎の治療のために都内の病院に入院しています。

 

入院から数日経過。

退院予定日は、未定。

パソコンが目の前にある。 

幸い痛みも引いてきた。

 

ということで、現在進行中ではありますが今回の憩室炎についての体験談的なものをここに記していこうかと思います。

退院した後も食生活などをいろいろ気にしないといけないようなので、そのあたりもまとめていければと思っています。

 

今後、同じ憩室炎で悩む方がすこしでも減ることを願いつつ。

 

で、そもそも憩室炎って何よ?

 

の前に、とりあえず筆者のプロフィールから置いていきますね。

 

名前:ささや(仮)

年齢:39歳

都内の会社で働くサラリーマン。中間管理職。ウェブ業界で残業多めだけど比較的ホワイトっぽい感じ?最近はVRの行方が気になる。SurfaceMacbook Pro両刀ユーザー。既婚。週末はかみさんとドライブ。ボルダリング(何気に同業者が多い)。体重などのパーソナルデータは後日。

 

ブログのタイトルは何も考えずに思い付きでつけてます。

2ch &まとめブログのタイトルみたいですが、同じようにもしコメントなどで疑問質問などを頂けるようであればそれも書き足していこうかな、と。

 

というわけでまずは入院初日のお話ですが、病室が消灯してしまったので、続きは次回から。

 

よろしくお願いいたします。

 

つづく

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