憩室炎で入院してたけど何か質問ある?

大腸憩室炎という病状で入院した39歳サラリーマンの備忘録的日記のようなもの。(現在進行形)

すべての始まりはうんこだった

その日もいつかと同じ、ありきたりな朝。

築40年。2LDKの賃貸マンション。

6時にスマホのアラームの音で目覚め、リビングへと向かう。

ガラストップのローテーブルに置かれたスマホのアラームを止める。

リビングの窓を少し開け、テレビをつけたらうとうとして、ソファーの上で二度寝

そろそろクーラーをつけなくても寝苦しくなくなってきた季節。

カーテンがなびいて、涼しげな青空がのぞいている。

今年の夏は雨続きで昨日も雨だったけど、今日はちょっといい天気みたいだ。

 

ニュース番組は時間通りに進行するから意味がある。内容を知りたいわけじゃあない。

テレビからいつもどおりに流れる6時半のジングルを聴き、起き上がり、髪をセットし始める。

6時半にアラームをセットして起きるとあまり調子が出ない。結局こんな二度寝が日課になってしまった。

近隣の家賃相場よりも安めで、老朽化が著しいこの建物。

入居率も高くないのだろう。ほかの階ではデイケアサービスの事務所が入っていたり、近隣のマンション建築の時には建築関係の人の休憩所としても使われているようだ。

このあたりの住宅地は一戸建てや2階建てのアパートが多く、マンションはまばら。

この昭和の団地のような建物と駅前の分譲マンションのいくつかがぽつんと頭を出している。

外の廊下にはきっと昨晩の雨が吹き込んで水たまりができているだろう。

オートロックもない、スキマ風も多いマンション。

 だけどこの4階の東向きの窓から見える広々とした住宅地の景色が気に入って、引っ越しの決断もできず、結婚してからもう8年ここで夫婦生活を送っている。

 

カミさんが起きてきた。

冷蔵庫から出した朝食は昨日の残りモノ。

豚しゃぶの具を丼にのっけて、小皿に残しておいたゴマダレをかけて一気にかき込む。うまい。

歯を磨き、スーツに着替える。ネクタイをするのは客先に訪問するときだけ。

7時ゼロ分。

テレビがいつも通り律儀に番組を切り替える。ちょうどよい合図。

カミさんと玄関で、忘れ物がないか確認。

ハンカチがない。いつも忘れてしまう。

ハンカチを受け取って、カミさんに見送られ外に出る。

部屋のすぐ隣にある錆びついた外階段から下へと降りていく。そう、角部屋なのもお気に入りのポイントだった。

駐輪場に置かれた10年物のママチャリ。

カギの動きが硬くて、鍵穴にもスムーズに入らない。最近のちょっとしたストレス。

油をさせばいいだけなのに、1年くらい放っておいてる気がする。

しばらくガチャガチャやってやっとカギが開いた。

大きめの肩がけビジネスバッグをカゴに放り込み、自転車にまたがって駅に向かう。

駅までは平坦な道。隣駅から出る始発電車に乗れば座って40分。乗り換えなしでひと眠りしながら会社に行ける。

これも引っ越しできないもう一つのお気に入り。

 

会社は都内。10年務めている。

転職を考えていないわけではないけど、これまでも重要なプロジェクトを預けてもらい、それなりのポジションで働かせてもらっているので、ここでできる限りのことを試していきたいと思っている。

特に東京で消耗もしていない。

今は中間管理職。

最近ちょっとした組織変更があり、朝から今後の方針などの話をメンバーとしていた。

 

お腹に違和感を覚えたのは10時ごろ。会社の自席で毎週提出する報告書をパワーポイントで作成している時だった。

ちなみにこのパワーポイント、作るのに2時間くらいかかることもあるが、報告は10分で終わる。サラリーマンとはこんなもの。一方で、1時間で作った提案書が10億円の受注になることだってある。

かけた労力と生み出せる結果のギャップを嘆いているわけではなく、皮肉っているわけでもない。必要なのは労力のバランス。

キャリアとは分散投資みたいなもので、いち分野に長けることも重要だけど、トータルで勝つのはそれぞれのタスクを全部「やりすぎることなくきちんとやってきた人」そして「いいタイミングでそのどれかにレバレッジを利かせられた人」だと思う。

そこにはそれなりの器用さも必要だけど、どこかにこだわりすぎて一人の力から抜け出せない人は大抵消耗していく。

 

話がそれたけど腹痛の話。

今回の腹痛、もともと私はお腹は弱いが、いつもとはちょっと違った妙な腹痛だな、とは思った。

下痢の時のような腸の動きは感じるんだけど、便意がそれほどない。

 

うんこでそうなのに、うんこ出ない。

 

お腹ぐるぐる言ってるのに、うんこ出ない。

 

ふしぎ!

そんな感じ。

 

結局うんこが出る感じではないので、しばらく資料作りを継続していた。

妙な腹痛がはっきり「痛み」になったのはその30分後くらい。

下痢の時の「ぐるぐる」「出そう」な痛みではなく、明確にズキンとした痛みがあった。

これはちょっとまずいなと思い、トイレへ。

会社のトイレは特に個室が少なく、全室使用されていることが多い。

案の定、フロアのトイレの個室は全部埋まっていた。

 

まいったな。

最近、男性トイレの個室がやたら埋まっているのはスマホのせいだろうか、この中でまじめにうんこしている奴はどれだけいるんだろう。

個室でゲームしている奴は呪われろ、まじめにうんこしろ。

いや、人のことは言えない。自分もついつい個室に入るとスマホを取り出してしまうことがある。たぶんその時は同じように呪われてるなぁ。

 

などと思いながら、とはいえ待っているのもつらいのでフロアを移動して空いてる個室を探しに行く。

やっと見つけた個室で用を足す。

 

でた。

うんこでた。

何となく見てみた。

 

下痢じゃなかった、固形。

まあ、それは普通。

 

昨日の豚しゃぶのニラが入ってた。

まあ、それも普通。

 

でも、そのうんこは、やっぱり普通じゃなかった。

 

そのうんこは、白かった。  

 

つづく

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